5月例会「大学図書館などでの新型コロナ対応情報交換会(オンラインミーティング)」開催報告

 2020年5月10日に、新型コロナウィルス感染症対応に関する情報交換を主題とした例会を開催しました。今回の例会は大阪地域グループの例会としては初めて、オンラインミーティング形式によって行いました。

 

 新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴い、大阪府内の多くの大学図書館でも臨時休館や職員の在宅勤務といった対応が行われました。普段ならば近隣の大学図書館に電話などで照会することのできる業務上の様々な疑問についても、感染症対策の為多くの大学図書館の職員が在宅勤務を行っていることから問い合わせを行うこと自体がままならない状況となりました。そこで感染症対応などの各大学の状況についてお互いに気軽に質問し、大学図書館感染症対応に関する情報をお互いに共有できる機会を設けたい、というねらいから今回の例会は開催されました。

 

 当日は大阪地域グループ会員の皆さんに加え、他の地域グループにご所属の各地域の大図研会員の皆さんもご参加下さり、主に以下の話題について話し合いました。

 

トピックその1 交代制勤務など、職員の勤務体制

トピックその2 郵送貸出サービス

トピックその3 返却図書、配架図書の消毒について

トピックその4 開館している場合の利用制限の範囲

トピックその5 ILL・オリエンテーションの対応について、各館の状況

 

 5月初旬から部分的に図書館サービスを再開する大学図書館が増加する傾向にあったこともあり、再開に当たって課題となる点を中心に参加者の皆さんからの質問や疑問点の提示、自大学の状況の報告や参考となる事例の紹介などが活発に行われました。

 

〇トピックその1 交代制勤務など、職員の勤務体制

 在宅勤務や職員が交互に出勤する交代制勤務を行っている大学が多いこと、感染拡大状況の違いから地域によって対応の状況にも違いがあること、対面での会議や打ち合わせが難しいことからウェブ会議システムを用いて連絡を行っていることなどが話題となりました。

 

〇トピックその2 郵送貸出サービス

 大学のキャンパスへの学生の通学自体が制限されていることから、大学図書館の蔵書を学生に提供する手段として、郵送貸出をどのように実施するかという点を巡って話し合いました。経費負担や補償などの論点も踏まえて具体的にどのような郵送方法を選択するか、郵送貸出に対応する職員側の体制にも限りがある中でサービス対象の範囲をどのように定めるかといった点などが話題となりました。

 

〇トピックその3 返却図書、配架図書の消毒について

 部分的な開館や臨時的な貸出を行う際、感染症対策の面から図書をどのように取り扱うか、という点を巡って情報を交換しました。大学図書館では公共図書館などと比較してビニールのブッカーを表紙に付けていない場合が多いこともあり、一定期間返却図書を別置することなどについて話し合いました。また図書の取り扱い以外の全体的な感染防止対策にも話題が及び、検索用PCの消毒やカウンターでの飛沫防止用のビニールなどの設置、利用者に手洗いを推奨する広報の実施などを巡って意見を交わしました。

 

 

〇トピックその4 開館している場合の利用制限の範囲

 部分的な開館を行う際に、どのように図書館内での密集や長時間の滞在を避け、安全な空間を維持するかという観点から、事前申し込み制を取る方法や長時間の滞在を制限し資料利用のみとする方法などが話題となりました。

 

〇トピックその5 ILL・オリエンテーションの対応について、各館の状況

 全国的なILLの受付停止の状況や、郵送貸出と同じく学内者向けに臨時に複写物の郵送を実施している事例、例年対面方式で実施しているガイダンスやオリエンテーションについてはその内容を収録した動画を作成・公開している事例などが紹介されました。また電子ジャーナル・データベースなどの学外利用や、授業目的での公衆送信に関する補償を巡る著作権法改正への対応などについても情報交換を行いました。

 

 

 大学図書館で働いていると、どうしても自分自身で担当している業務とそれ以外の業務についての目配りには差が出てしまうものですが、在宅勤務によってその傾向は一層強まってしまい、担当業務に埋没してしまっているような感覚がありました。今回の例会では様々な話題を通じて、図書や雑誌、ILLや閲覧といった担当業務の枠を超えて、大学図書館が新型コロナウィルス感染症によってどのような課題に直面しているのかを改めて実感する機会となったように思います。

 また例会では、課題を共有する中で感染症対応の枠を超えた、今後の大学図書館のサービスを巡る議論にも接することができました。例えばカウンターでの対面サービスが難しい中でレファレンス・サービスをどのように学生に実施していくか、という話題は電子化が進行する中で大学図書館がどのようなサービスを行っていくか、というとても大きな問題を取り上げており、目の前の課題に追われる時期だからこそとても面白く感じられました。

 

 今回は初めてのオンラインでの例会実施ということで、参加者の皆さんには運営の不手際でご迷惑をお掛けする場面もありましたが、今後も大阪地域グループではオンラインの利点を活かした行事についても企画・実施していきたいと考えていますので、またのご参加をお待ち致しております。

 

 また大阪地域グループでは会員限定参加のメーリングリストを設置しています。地域グループ会員はいつでも他の地域グループ会員に向けて質問などの投稿を行うことができますので、ご関心をお持ちの方は是非この機会に入会をご検討下さい。

 

 今後の例会企画へのご要望や、入会に関するご質問などは随時大阪地域グループ委員会(メールアドレス dtk-obc◆googlegroups.com 送信時は◆を@に変換して下さい)までお寄せ下さい。

 

 

『大学の図書館』3月号 特集「NACSIS-CAT/ILLのこれまでとこれから」

 大学図書館問題研究会の会報『大学の図書館』3月号(第39巻第3号、No.556)に、大阪地域グループが編集を担当した特集「NACSIS-CAT/ILLのこれまでとこれから」が掲載されました。特集記事は以下の4本です。

加藤晃一「端っこから見たNACSIS-CAT/ILLの黎明期」
大石博昭「NACSIS-CATの想い出のことども」
柿原友紀「九州地域グループ『CAT2020勉強会』開催報告」
土出郁子「Beyond NACSIS-CAT/ILL」

 昨年11月のCAT2020勉強会に続きCAT2020について取り上げるとともに、NACSIS-CAT/ILLの初期の歴史も振り返る特集となっています。CAT2020を巡る議論のご参考となれば幸いです。

11月例会②「CAT2020勉強会」+「忘年会」開催報告

 11月23日に、11月2回目の例会として「CAT2020勉強会」を行い、その後少し早めの大阪地域グループ忘年会を開催しました。

 今回の例会では、日本の大学図書館での目録業務やILL業務で大きな役割を果たしてきたNACSIS-CAT/ILLの再編を主題として取り上げました。今回は講師を招いて報告・講演を行う形式ではなく、9月に実施された「CAT2020説明会」の講演動画(https://youtu.be/3rfaIjBGF5g )が国立情報学研究所より公開されていることから、講演動画の一部を視聴しつつ参加者間で来年2020年からの変更点などについて意見交換を行いました。
 まず一連のNACSIS-CAT/ILL再編の目的・背景について講演動画で確認を行い、各図書館での目録業務を取り巻く現状などについて情報交換を行いました。
 NACSIS-CATの書誌作成単位の変更については、複数巻次の図書資料の場合に書誌について従来の「VOL」でまとめられた書誌と今後許容される物理的な図書1冊単位での書誌とが並立して混在することから、「VOL」でまとめられた書誌を巻次ごとに修正する、いわゆる「VOLばらし」の対応などについて議論が行われました。
 また複数書誌の並立を想定して今回新設されるRELATION機能についても、NACSIS-ILLでのILL依頼の際に注意が必要な点や、図書館システム上でRELATION機能についてどのような操作が可能かといった点について検討しました。
 目録業務に限らず、ILLやレファレンス、図書館システムといった様々な業務を経験している方々が集ったことで、日頃の担当業務を超えた横断的な議論となったように思います。
 例会終了後の忘年会では、研究業績を把握するデータベースや書庫の狭隘化を巡る課題など、大学図書館に関する様々な話題について話し合いました。

 

 今回の例会には大阪地域グループの会員に加えて、京都地域グループ、兵庫地域グループといった大図研の他の地域グループにご所属の会員の方、SNSでCAT2020について検索していてこの例会のことを知ったという非会員の方などにもご参加頂きました。動画を視聴しつつの勉強会は初めての試みでしたが、意見交換の際に多様な経歴の皆様から積極的にご参加頂いたことで、当初想定した時間を超過する充実した例会を行うことが出来ました。
 今年も可能な範囲で大学図書館問題研究会の会員に限らず大学図書館に関心をお持ちの方に広くご参加頂けるような例会企画を行っていきたいと思いますので、今後とも大阪地域グループをどうぞ宜しくお願い致します。

11月例会「追手門学院大学新図書館見学会」開催報告

 11月2日に、11月例会として追手門学院大学の新図書館<アラムナイ・ライブラリー>の見学会を開催しました。

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 今回の見学会では大阪府茨木市追手門学院大学茨木総持寺キャンパスを訪れ、職員の皆様にご案内頂きながら新図書館の所在するアカデミックアーク内を見学しました。
 アカデミックアーク自体が三角形の建築であることや図書館が1階ホールの天井から吊り下げられたようなドーム部分に所在すること、図書館の外の廊下にも図書が配置され図書館と教室部分との一体化が図られていることなどを実地に観ることができました。
 また職員の皆様からは新図書館の概要やサービス内容について、参加者からの質問への回答も交えつつご説明頂きました。例えば追手門学院大学図書館では追手門学院大学中学校・高等学校の生徒も対象とした電子書籍のサービスを提供しているとのことで、大学図書館学校図書館との連携という課題についても考えさせられるような内容でした。
 また見学会終了後には、第2部として同日同キャンパスにて開催された新キャンパス開設記念セミナー「ICTを活用した学校教育・社会教育の新たな取り組み―電子図書館の可能性」、第3部として大図研大阪地域グループや他の団体からの見学者の皆様との合同での懇親会にも参加させて頂きました。
 今回の見学会につきまして、事前の調整や当日の口頭説明など何かとご尽力下さった追手門学院大学の湯浅俊彦図書館・情報メディア部長、学園祭当日というお忙しいところ、長時間にわたりご対応頂いた追手門学院大学の皆様にこの場を借りて改めてお礼申し上げます。

9月例会「全国大会参加報告会」報告

 9月28日(土)に、8月31日~9月2日にかけて神戸で開催された大学図書館問題研究会第50回全国大会の参加報告会を実施しました。

 

 この報告会につきましては、地域グループ委員会での事前準備と広報に不手際があり、当日に急遽会場変更を行う事態となり大変申し訳ありませんでした。本来予定していた会場の予約にご尽力頂いた皆様、急な会場変更で当日にお手数をお掛けした参加者の皆様に改めてお詫び申し上げます。

 

 大図研の全国大会では例年総会やシンポジウムと共に、研究主題別の分科会を開催しています。今年の神戸大会では8つの分科会が開催されました。

第50回全国大会分科会 webページhttps://www.daitoken.com/research/annual_conference/2019/section.html

 

 今回の参加報告会では以下の5つの分科会について、参加した大阪地域グループ会員から分科会を振り返る報告が行われました。

 

第1分科会:大学図書館史 「大学図書館問題研究会の歴史を見る part3」

 (報告者:小山荘太郎さん)

第2分科会:利用者支援 「スマホSNS 時代における著作権のあり方」

(報告者:伊賀由紀子さん)

第3分科会:資料保存 「デジタルアーカイブ大学図書館

(報告者:小村愛美さん)

第5分科会:図書館経営 「働き方改革大学図書館

(報告者:寺島陽子さん)

第7分科会:図書館建築・デザイン 「自館の建築にふさわしいマナーサインを考える」

(報告者:吉田弥生さん)

 

 今回は隣県での開催ということで、例年に比べて大阪地域グループからの参加者も多く、報告者以外で全国大会に参加された大阪地域グループ会員の方々にも、質疑応答の中で何かと全国大会を振り返って発言して頂きました。

 

 また参加報告会当日には取り上げられなかった他の分科会についても、参加した会員の方から分科会の議論の内容をまとめたレポートを配布頂いたり、地域グループのメーリングリストに詳しい報告を投稿して頂いたりと、とても熱心な情報共有を自発的に行って頂きました。参加報告会を補う貴重な情報を有難うございました。

 

 各報告後の質疑応答では、例えばスマホでの資料撮影を巡る著作権と広報活動の現状、あるいは継続的なデジタルアーカイブの管理運営といった話題を巡って活発な議論が行われ、さながら分科会の延長戦という感もあり、全国大会での議論をより深める機会となったように思います。

大阪地域グループ総会報告

 7月27日(土)に、大阪市の難波市民学習センターにて第4回大阪地域グループ総会が開催されました。

 当日欠席された会員の方の委任状も含めて定足数を満たしていることを確認した後、第1号から第6号までの各議案について審議を行い、全ての議案が承認されました。

 

 審議では例会の運営について、実施回数や会場確保などに関する質問がありました。地域グループ委員より、具体的な開催回数については定めずに努力目標としていること、例会1回当たりの大まかな支出の状況、過去には参加者同士で資料を読み議論を行う形式の会を実施した事例もあったことなどの説明がありました。

 例会については、地域グループ委員の時間的な余力などの問題はありますが、可能な限り実施に努めることで、より多くの会員の皆さんにとって充実した企画としていきたいと考えています。例会に関する疑問や企画についての要望など、今後もお気軽に地域グループ委員会までお寄せ頂けますと幸いです。

 

 また総会の審議終了後には当日の出席者同士で情報交換を行い、主に8月-9月にかけて神戸で開催される第50回全国大会について話し合いました。

 大学図書館問題研究会(大図研)では毎年1回全国大会を開催しています。全国大会への参加が初めてとなる方から全国大会の様子に関する質問が出たこともあり、ベテランの会員から過去の全国大会に関する経験の紹介があるなど、全国大会への参加に当たって有益な情報を共有する機会となりました。

関西3地域グループ合同例会「大学図書館の資料保存:体制の構築と継続」報告

3月2日に大阪市の難波市民学習センターにて関西3地域グループ合同例会「大学図書館の資料保存:体制の構築と継続」を開催しました。

 

講演1 藤井亜希子氏(和歌山大学図書館)「資料被害とその対策―シバンムシ、カビ、マイクロフィルム劣化―」
講演2 由利江里子氏(大阪大学大学院理学研究科数学専攻図書室)「西洋古典資料保存の第一歩」
講演3 図書館資料保存ワークショップ「資料保存・修復のいまとこれから」
    1. 山崎千恵氏(京都大学)「京大での資料保存ワークショップの取り組み―書庫環境整備から遡及入力、デジタルアーカイブまで」
    2. 永田千晃氏(京都大学)「資料保存ワークショップから資料保存ネットワークへ」
    3. 八木澤ちひろ氏(京都大学)「一般書の資料修理にあたって―修理本の具体例紹介」

合同例会は毎年京都・大阪・兵庫の3地域グループが共同で開催しています。2年前は兵庫地域グループさんの主担当でオープンアクセスを主題に、昨年は京都地域グループさんの主担当で図書館システムを主題に開催されました。

小村地域グループ長からの開会挨拶の後、最初に藤井氏からシバンムシやカビによる被害の実情や対処方法を具体的に紹介頂きました。
数年間にわたって資料被害への対策に取り組んだ御自身の経験に基づき、長期的な対処計画からカビのふき取り方、マイクロフィルムの劣化具合の判定に用いる機器まで、多くの情報が盛り込まれた御講演でした。
藤井氏御自身も被害に接してから専門家の助言なども含め資料保存について様々な情報を取り入れてこられたそうで、業務上の課題に対応する為に広く情報を収集し深く学ぶという姿勢そのものが印象的でした。

 

 次に由利氏からは西洋古典資料の資料保存に関して御話頂きました。
表紙の材質などの形態面での特色から、資料保存の為に1冊ごとの劣化状況を調査しカルテという形で記録する方法まで、西洋古典資料を取り扱う方法を御紹介頂きました。
大量の図書資料を扱っている普段の業務では逆に意識することの少ない、図書の形その物や個々の資料の状態といった点について捉え直す機会となりました。

 

最後に図書館資料保存ワークショップの3名のメンバーの皆様から、資料保存に関する活動や図書の修理技術などについて御講演頂きました。
山崎氏と永田氏には京都大学の図書館員などによって行われてきた、これまでの図書館資料保存ワークショップの歩みを振り返って頂きました。
資料保存が様々な図書館業務と結びついた課題であること、図書の修理方法や修理用の素材についての悩みは多くの図書館員が有しており、そういった悩みを共有しつつ資料保存に取り組む活動が展開されてきたことなどを知ることが出来ました。
異動などで参加者がなかなか集まらない時期もあったそうですが、より広い層に参加を促すように見学会や読書会などの新しい試みを実施したり、デジタルアーカイブのような新たな課題と資料保存を結び付けて考えたりといった積極的な姿勢が印象に残りました。

八木澤氏には、図書の修理方法について御紹介頂きました。
図書館資料保存ワークショップの活動内容がまとめられたウェブサイト(https://letterpresslabo.com/author/kulpcws/ )も御紹介頂きながら、背表紙の外れなどの破損が発生した際への対処方法などを御話頂きました。
西洋古典資料についても感じたように、普段余り意識出来ていない図書の材質について改めて知ることが出来る有難い機会となりました。
また休憩時間には、図書館資料保存ワークショップで実際に用いている修理関係の機器などを机に展示して頂きました。

 

各講演の終了後に質問時間を設け質疑応答を、全講演の終了後にはパネルディスカッションを行いました。

西洋古典資料についての個別のカルテを電子公開するなどして、個々の西洋古典資料の状態に関する情報もウェブで共有出来ないかといったデジタルアーカイブを見据えた議論もありました。
また講演も含めて、一橋大学社会科学古典資料センターで開催されている研修の紹介もあり、専門機関による研修が知識の取得や担当者同士のネットワーク作りに果たしている役割を改めて認識することが出来ました。

最後に森藤兵庫地域グループ長から、今年の夏に予定されている全国大会に関するアピールが行われ、閉会となりました。

講演と議論を通じて、大学図書館員が資料保存についてどのような役割を担っていくべきかという点について、改めて考え直す機会となったように思います。