10月例会「全国大会報告会」開催報告

 2021年10月9日、大阪地域グループ10月例会「全国大会報告会」をオンラインミーティング方式で開催しました。

 

 今年の9月18日~9月20日に開催された、大学図書館研究会第52回全国大会(https://www.daitoken.com/research/annual_conference/2021/ )での議論の内容を振り返りました。全国大会に参加した大阪地域グループ会員が8つの分科会(https://www.daitoken.com/research/annual_conference/2021/section.html )のうち5つの分科会について参加報告を行うと共に、全国大会に参加した例会参加者からも随時全国大会の様子について活発な発言がありました。他の地域グループにご所属の大図研会員の方、非会員の方などのご参加もあり、例会の参加者は10名でした。

 

 第1分科会「大学図書館史」では大学図書館問題研究会の歴史を辿る連続企画として、1990年代の大図研の動きについての報告と、学術情報システムを巡る動きについて言及した図書館史の著作を巡る報告とが行われたとのことでした。分科会での議論では、実際に1980年代当時に学術情報システムの構築に携わった参加者の方から、「かみかた機械化研究グループ」に関する貴重な証言も行われ、史料に加えてオーラル・ヒストリーに接する機会となったとのことでした。

 

 第4分科会「キャリア形成」では会報『大学の図書館』2021年7月号の特集「子育てとキャリア形成」との連動企画として、「子育てと仕事の両立を考える」が主題として取り上げられました。子育てをしながら図書館職員として働き続ける際の様々な困難や、限られた時間の中で最新動向について学ぶ際の工夫などが議論されたとのことでした。例会参加者からも、女性に限らず男性も子育ての影響を受けとめる視点が重要であることや、育児に限らず介護なども含めて図書館職員同士が支え合っていく視点などへのコメントがありました。

 

 第5分科会「学術情報基盤」では「電子資料の予算をもっと獲得するための利用統計の作り方」を主題として、電子ジャーナルや電子ブックなどの利用統計を巡る事例報告が行われました。分科会当日はウェブ上の電子ファイルをノートとして参加者が次々に書き込みを行うことで議論が行われ、利用統計取得にあたっての悩みや望ましい利用統計の在り方が話題となったとのことでした。例会参加者からも、出版社やパッケージごとにプラットフォームが異なる中で効率的に利用統計を取得する方法や、未購読資料のアクセス拒否件数などについて質問やコメントがありました。

 

 第7分科会「図書館建築・デザイン」では「地域文化を育む図書館建築と図書館の役割」を主題とする講演が行われました。公共図書館長や大学図書館長を歴任し現在は大分県で複合型の学習・宿泊施設の運営に当たっている講演者の豊富な経験に基づき、館種を超えて重要となる施設づくりの視点や発想を巡る議論が行われたとのことでした。今回の報告会でも分科会で取り上げられた建築の画像などが紹介され、オンラインで視覚的に施設の情報を共有することができました。

 

 第8分科会「出版・流通」では「電子ブックの出版状況の変化と利活用」を主題に、電子ブックのプラットフォームを取り扱っている書店からの事例報告が行われ、書店と学術書を出版する各出版社の間での電子化に関する状況などを巡って議論が行われました。例会参加者の間では、従来の冊子体の学術書の購買層のうち大学図書館の占める割合を巡り、冊子体の選書の状況などについて話し合ったほか、電子ブックの学外接続方法などについても事例を共有しました。

 

 5つの分科会についての参加報告の終了後、例会参加者からそれ以外の分科会についての情報提供や、交流会や自主企画などの様子に関する発言がありました。

 

 第2分科会「利用者支援」では「もっと知りたい! ILL ~ILL・図書館間相互協力を取り巻く諸問題について~」を主題に、British Libraryへの代理店を通じた申し込みサービスが終了したことや日韓グローバルILLが終了予定となっていること、OCLCのWorldShare Interlibrary Loan(WorldShare ILL)の利用など海外ILLを巡る最近の状況などが話し合われたとのことでした。例会参加者の間では、個人登録によるILLサービスについて図書館側がどのように関与するかという点などについて事例の共有が行われました。

 

 自主企画として2年ぶりにオンラインで開催された「地酒の会」については、今回は各自が様々なお酒を飲みながら銘柄や産地などをお互いに伝え合い、終了後には有志からお酒の情報に関する目録データが送付されるなど、和やかに交流が行われたとのことでした。

 

 今年の全国大会も新型コロナウィルス感染症の影響を受けて、昨年に続き2年連続のオンライン開催となりました。オンラインでは以前の全国大会のように休憩時間や終了後に直接他の参加者と個別に話をすることはなかなか難しく、時には他の参加者の感想や出席できなかった分科会の様子をもっと知りたい、と思う場面もあります。今回の報告会では多くの分科会について知ることができると共に、分科会の内容とも関連してそれぞれの大学の事例などについても接することができる機会となりました。